あの日に置いてきた恋をもう一度あなたと
「お待ちしてました!」

 菜月が部屋に入るとすぐに、一人の若い男性が駆け寄ってくる。

「僕はシステム部の笠井(かさい)です。デスクの配置の関係で、この部屋で勤務していただくことになりますので、よろしくお願いします」

 笠井は人の良さそうな笑顔を見せると、ぺこりと頭を下げた。

「そうなんですね。本日よりお世話になります。綾瀬と申します」

 笠井に合わせるように頭を下げた菜月が、にこっと笑顔を見せると、笠井は軽くぴょこんと飛び跳ねる。

 菜月が不思議そうに首を傾げると、笠井は赤くなった顔の前で大きく両手を振った。


「あ、あの……今まで御社からは男性のSE(エスイー)さんが出向されていたので……あまりに、その……お綺麗な方でびっくりしました」

「え!? そ、そうですか……?」

 出向してすぐに、こんな事を言われるのは初めてだ。

 なんと反応して良いかわからず戸惑っていると、室内にいた数名の社員たちからヤジが飛ぶ。
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