あの日に置いてきた恋をもう一度あなたと
「私ね、あの時すごくショックだったし、悔しかったし、妬ましかった。だからね、菜月ちゃんの前で凌平くんに告白したの」

 萌絵の声に、菜月は戸惑ったように顔を上げる。

「どういうこと……?」

「だって凌平くんなら絶対に、私を友達としてしか見れないって言うと思ったから。だからね、私は『じゃあ、菜月ちゃんと一緒だね』って言った」

「え……」

「わかってたんだ。菜月ちゃんは心が優しいから、私がそう言えば自分の気持ちを隠して、もう凌平くんとは友達以上の関係になることはしないだろうって……。ずるいよね」

 萌絵は鼻をすすりながらそう言うと、目尻の涙をハンカチで拭う。

「そうだったんだ……」

 菜月は何も言えず、ただ下を向いた。


 あの頃、萌絵がそこまで凌平に想いを寄せていたとは知らなかった。

(きっと、私の行動のせいで、傷つけたこともあったよね……)

 菜月は潤んできた涙を感じながら小さく息をつく。

 萌絵はふうっと一旦大きく息を吐くと、そんな菜月にわざと明るい顔を向けた。
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