御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
うわっ!

今更どんな顔して、お母様に会えばいいの⁉

急いで私が掃除や洗濯をしている間に、律さんにケーキを買ってとお願いした。

そして律さんが家を出てから10分後。

突然、インターホンが鳴った。

「律?いる?」

その声だけで、もう背筋が伸びる。

インターホン越しでもわかる、きちんとした大人の女性の声音。明らかに“お母様”の風格が漂っていた。

私は急いでエプロンを取って、鏡の前で前髪を整える。

――大丈夫。とりあえず笑顔、笑顔。

「は、はい、今開けます!」

ドアを開けると、そこには品の良いグレーのワンピースをまとった、背筋の伸びた女性が立っていた。

年齢は……そう、私の母より少し若いかもしれない。

肌には皺もあるけれど、それすら凛としていて、威圧感すらある。

「はじめまして……千尋と申します。」

深く頭を下げた私に、お母様はじっと視線を落とした。
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