御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
「……はじめまして。律の母です。突然ごめんなさいね。結婚のご挨拶もなく、いきなりの訪問で驚かせてしまって。」

「い、いえ……こちらこそ、お会いできて光栄です。」

笑顔が引きつるのを、自分でも感じる。

すると、奥からバタバタと足音がして、買い物袋を下げた律さんが帰ってきた。

「母さん、早いな。ケーキ買ってきたよ。」

「まあ、そんなのいいのに。でも……ありがとう。」

お母様は律さんの顔を見て、ふっと柔らかい笑みを浮かべた。

その瞬間、空気が少しだけ和らいだ気がした。

リビングに通して、緊張しながらお茶を出すと、お母様はソファに腰を下ろした。

私の動きを一つ一つ、静かに見ている。

「突然、律が結婚したって聞いた時には、驚いたわ。」

お母様はカップをソーサーに置きながら、穏やかにそう言った。

けれどその目は鋭く、まるでこちらの心の奥を探ろうとしているようだった。

「そうですよね……」

私はそっとうなずいた。
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