御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
(私だって逆の立場なら、きっと飛び上がるほど驚くだろう)

「しかも、交際0日婚だなんて。今の若い人には流行ってるのかしら。」

「いえ……」

私は首を傾げながら苦笑いした。

「珍しいと思います。」

「でしょう? だって交際してないのに結婚って……お見合いしか思いつかないじゃない?」

お母様は口元を抑えて笑ったが、その笑みには探るような含みがある。

「どうしてこの娘と?」という言葉が、行間から溢れている気がしてならない。

「は、はい……」

返事をしながら、私は背筋を伸ばした。

場を和ませようとするお母様の柔らかい言葉と裏腹に、緊張感は高まるばかりだ。

(でも、逃げない。だって、私は律さんの“妻”なんだから)

手の中のカップを握る指に、自然と力がこもった。

「それなのに、お見合いじゃないって。どういう事なのかしらって。」

お母様はそう言いながら、また一口、お茶を飲む。
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