御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
キッチンでお茶を淹れていた律さんが、うっかり湯呑を倒しそうになりながら声を上げた。

「こんな息子に運命感じてくれてるんだよ? 有難く思わないと。」

律さんがお茶を淹れながら、冗談めかして笑う。

お母様はその言葉に「そうね。」と頷いたけれど、その目は少し潤んでいるようにも見えた。

律さんがお茶のお代わりを持ってくると、すっと私の隣に座った。

その距離が自然で、心地よくて、私の緊張が少し和らいだ。

「俺だって、千尋に運命感じてるし。」

その一言に、胸がきゅんと鳴る。

私がそっと律さんを見ると、彼はふっと照れたように笑った。

「そうなの? もしかして……初めて見た時に、結婚を意識したとか?」

冗談まじりに聞いたつもりだったのに――

「その通りです。」

律さんは少し困ったように首をすくめるようにして、真顔で言った。

私は思わず息をのむ。

その一言が、真っ直ぐすぎて。

「……あらやだ。年甲斐もなくキュンキュンしちゃった。」
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