御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
「そんなに毛嫌いしなくてもいいじゃない。私たち、一時は愛し合った仲なんだから。」

──色っぽい。

あの“石原涼花”が、こんなふうに話すんだ。

しっとりと湿った声。まるでワインに酔ったみたいな余韻を残す。

ウェイトレスが近づいてきたので、私はこっそりとアイスカフェを頼んだ。

(涼花さんって……あんなふうに律さんを見てたんだ。)

カップを持つ仕草、首の傾げ方、脚の組み方──

全部が“女”として磨き上げられていて、自信に満ちている。

「ねぇ、あの頃のこと、後悔してない?」

涼花さんの問いかけに、律さんはすぐには答えなかった。

私は手にしたストローをぐっと握る。

「後悔してないよ。全力で君を愛した。他の人なんて見えないくらいに。」

──その言葉に、心臓が止まりそうになった。

胸の奥がズキンと痛む。

(そんなに……そんなに、涼花さんを……?)

まるで過去の恋に、自分が負けてしまったみたいな錯覚に陥る。
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