御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
そう、先手必勝。私はあえて「主人」と口に出した。

すると彼女は、少し口角を上げて微笑んだ。

「はい、いろいろとお世話しました。」

……やっぱり、この女。

“宣戦布告”に来たんだ。

「では、こちらへ。」

私はロビーに設置されているテーブル席へと、彼女を案内した。

ここはビル利用者用のスペースで、ちょっとしたカフェ風になっている。

休憩している人々の視線がちらほらとこちらに注がれる中、私は静かに椅子を引いた。

「どうぞ。」

そして自販機でコーヒーを二つ買い、一方を彼女に差し出す。

「ありがとう。」

赤いネイルが紙コップを受け取った。

お互い一口、コーヒーをすする。

けれど、あたたかいはずの飲み物も、どこか喉を通りにくい。

私はなるべく冷静に微笑みながら尋ねた。

「ええ、本日はどのようなご用件で?」

すると、彼女は澄んだ目でまっすぐに私を見た。
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