御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
「ええっと……」

言葉が詰まりそうになる。でも、嘘もつけない。

「……仕事? なんかミスったとか?」

「ううん、仕事は大丈夫だったんだけど……」

私は冷蔵庫を開けながら、視線を合わせないように答えた。

「そっか。じゃあ何?」

律さんの声は穏やかだけど、私の様子を見抜こうとしている。

取り繕うように野菜室から人参を取り出し、まな板に置いた瞬間、包丁を持つ手が止まった。

「……今日、涼花さんが来たの。」

思わず口から出ていた。

「え?」

律さんがすぐ後ろに立っていた。

「会社に。私を訪ねて。」

包丁を握る手に、少し汗がにじむ。

「……何しに?」

その声は低く、明らかに怒りを抑えていた。

「律さんと別れてほしいって。涼花さん、ちゃんと話してた。あなたのこと、愛してたって。でも……」

「でも?」

「でも、手放したことも分かってた。なのに、今になってやっぱり愛してる事に気づいたって。」
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