御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
「──あいつ、ふざけんなよ……!」

リビングに律さんの怒声が響いた。

怒りを抑えきれず、拳をぎゅっと握りしめている。

あれほど冷静だった律さんが、涼花さんに対して、ここまで感情を剥き出しにするなんて。

でも──私は、そっとその腕を掴んだ。

「ねえ、律さん。」

彼がはっとしてこちらを見る。

「もう一度……私か、涼花さんか。どっちがいいか選んで。」

「千尋……?」

その声には戸惑いが滲んでいた。

自分でも、何を言ってるんだろうと思った。

でも、胸の奥に渦巻く不安をどうにかしたくて。

真っ直ぐに、彼の目を見た。

「私も……律さんを愛してる。でも、涼花さんも、あなたのことを愛してると思う。」

律さんは何も言わず、ただ私を見つめていた。

怒りの熱が、沈黙の中で冷えていく。

「だから……同じ条件で選んで。」

言いながら、喉の奥が痛くなる。

「その結果、涼花さんを選んでも、私は恨まないから。」
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