御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
「あら、そうなの?じゃあ、涼花さんの言うことは、嘘だったのかしら。」

ぽつりと呟かれたその言葉に、リビングの空気が凍りついた。

私は思わず、手にしていたお盆をテーブルの端に置いたまま、固まってしまう。

「……涼花が、何だって?」

律さんの声が低くなる。

お母様は、まるで天気の話でもするかのような口調で言った。

「昨日ね、買い物の途中で偶然お会いしたのよ、涼花さんと。そしたら彼女……こう言っていたの。」

——“律さんは、千尋さんと別れて、私と再婚することになります”って。

その言葉が、私の耳に届いた瞬間、膝から力が抜けた。

「……え?」

がくんと床に膝をついた私は、何が起きたのか理解できず、律さんを見上げた。

「千尋!」

律さんが急いで駆け寄り、私の肩を抱く。

「大丈夫か?」

「……あ、あ……」

震える声しか出ない。

胸の奥がきゅうっと締めつけられて、呼吸が浅くなる。

律さんは私の顔をのぞき込んだ。
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