御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
律さんは一瞬、驚いたように目を瞬かせた。

けれどすぐに優しい笑顔を浮かべて、私の手を取った。

「ありがとう、千尋。」

その言葉に、こっちこそありがとうって思う。疑わないで、信じてくれて。

「俺、信じてるから。千尋が選んでくれるって。」

「……うん。」

温かい手に包まれながら、私は小さく頷いた。

心の中でそっと、10年分の過去に別れを告げた。

そして、二人で「いってらっしゃい」のキスを交わす。

今日こそ、けじめをつける。そう心に誓って、私は家を出た。

案の定、定時に仕事を終えてオフィスビルを出ると、そこに悠太がいた。

街灯の下、スーツ姿の彼が少しだけ不安そうに立っている。

「悠太。」私は自分から声をかけた。

彼は驚いたように私を見たが、すぐに優しく頷いた。

「ちょい飲みでも行くか。」

そんなふうに誘われて、私たちは昔よく行っていた立ち飲み屋へ向かった。
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