御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
私がそう言うと、悠太は「ふーん」と静かに相槌を打った。

否定するでもなく、肯定するでもなく。ただ、少しだけ目を伏せた。

「結婚してから、恋愛しようって言われたの。それで、実際、恋愛してる。律さんと。」

悠太はその言葉に、少しだけ視線をあげた。

何か言いたげだったけど、代わりにビールのグラスに手を伸ばした。

ゆっくり、丁寧に喉を潤すように飲む。

その姿が、まるで——

この一杯で、私との時間が終わるのを知っている人のようだった。

ジョッキの底が見えると、彼は空を見つめたまま小さく笑った。

「そうか……ちゃんと恋してるんだな、千尋。」

私は頷いた。しっかりと、はっきりと。

悠太はグラスを置き、しばらく黙ってから言った。

「俺この前さ。千尋の旦那さんに会った時、奥さんが目の前で他の男とキスしようとしている時に、止めに入れるってすごいなって思った。」

「えっ?」

思わず問い返すと、悠太は目を細めて笑った。
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