御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
私はそっと立ち上がる。

「私、もう行くね。……律さんが待ってるから。」

「うん。……気をつけてな。」

背を向けて歩き出した時、悠太にまた呼び止められた。

「でも、もう一度俺との結婚を選ばせると言ったのも、本心。」

その言葉に、私は思わずちょっとだけ振り返った。

悠太は、昔と変わらない優しい目で私を見つめていた。

「愛してた。本当は、結婚したかった。千尋を、奥さんにしたかった。」

胸の奥が、きゅっと締めつけられる。でも私は、もう迷わない。

「ありがとう。私も、悠太のこと、愛してたよ。」

過去形でしか返せない自分に、少しだけ心が痛んだ。

でも、ちゃんと終わらせるための一言だった。

私は一礼して、店を出た。

夜風が少しひんやりして、気持ちを切り替えるにはちょうどよかった。

すると、通りの向こうに見覚えのあるシルエットが立っていた。
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