御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
父が目を逸らすと、母は「ほらね」と得意げに微笑んだ。

「男なんて、最初だけよ。ずっと特別扱いしてほしいなら、こっちからも言わなきゃダメ。女は言わなきゃ伝わらないってこと、ちゃんと覚えなさい。」

その言葉に、私は少しだけ笑ってしまった。

私は久しぶりに、実家の自分の部屋で眠った。

ベッドのマットレスの感触も、カーテンの花柄も、少し古びた本棚も──

何もかもが懐かしくて、安心する。

「いつぶりだろう……」

天井を見上げながら思い返す。

ああ、この前のお正月以来だ。

たった数か月前のことなのに、まるで一年も前のような気がする。

それぐらい──律さんとの結婚生活は、濃厚すぎた。

嬉しいことも、甘い日々も、戸惑いも、涙も。

詰め込まれた毎日は、実家で過ごすどの時間よりも密度が高くて。

だから余計に、今の静けさが、胸にぽっかりと穴をあける。

そんなときだった。

スマホの画面に、通知がひとつ灯る。
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