御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
《帰って来い、千尋。》

──律さんからだった。

短い。
しかも、どこか命令口調。

“帰って来てほしい”じゃなくて、“帰って来い”。

なんだか、私が悪者みたいじゃない。

「はぁ……」

深く息をついた。
返事はしなかった。

心の中で小さく呟く。

──取締役会なんて、毎年あるじゃない。

その度に誕生日をすっぽかされたら、たまったもんじゃない。

私の一年に一度の、特別な日なんだよ。

それなのに、どうして“私が怒っていること”にしか意識が向かないの?

──寂しいのは、私だったのに。

胸の奥が、じくりと痛む。

だけどそれは、律さんを嫌いになったからじゃない。

まだ、ちゃんと期待しているから。愛しているから──。

私はスマホを裏返し、ベッドに寝転んだ。

枕に顔をうずめて、目を閉じる。

本当は、あの人の腕の中で、今日も眠りたかった。
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