御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
社会の中で生きる“神楽木律”としての使命。

でも──

私の中で、言葉にならない感情がぐるぐると渦巻いていく。

カバンを持つ手が、じんわりと痛い。

胸の奥でなにかがじわじわと壊れていくような、そんな感覚。

「株主会は毎年この時期に行っている。その度に、千尋と喧嘩するのは嫌だよ。」

律さんの声は、穏やかで、どこか疲れていて。

それが逆に、私の心を締め付けた。

まるで私が、わがままを言って困らせているみたいじゃない──

「……じゃあ、もう私は誕生日のお祝いは諦めろって言うの?」

その瞬間、律さんの口がぴたりと止まった。

静まり返る空気。

外の車の音さえ、遠くに感じるほどに、二人の間に漂う重たい沈黙。

「私は……夫と過ごす、ささやかな誕生日を、一生……送れないの?」

かすれるように問いかけたその言葉に、私自身が一番、胸を締め付けられた。

豪華なディナーも、プレゼントもいらない。

ただ、一緒に笑って過ごせる時間が欲しかった。
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