御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
たった一年に一度──
“今日生まれてきてくれてありがとう”って言ってくれる、そんな一日が。

律さんは、何も言わなかった。

私の目を見ているのに、何も答えてくれなかった。

その沈黙が、答えのような気がして。

私はそっと目を伏せた。

──ああ、きっと私たち、同じ未来を見ていないのかもしれない。

その思いが、喉の奥で詰まって、涙になりそうなのを、私は必死で堪えた。

沈黙の中、私はゆっくりとカバンを持ち直した。

さっきまで痛かったはずの手は、もう感覚が麻痺しているみたいに、重さすら感じなかった。

「……今日も、実家に泊まる。」

ぽつりと呟いたその言葉は、風に紛れて消えそうなほど小さかったのに、

律さんの表情を明確に曇らせた。

「千尋……」

呼び止める声には、焦りも戸惑いも滲んでいた。

けれど、私は立ち止まらなかった。

「今、ここで何を言われても……私の誕生日は戻ってこない。」
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