御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
最初に口を開いたのは、お父さんだった。

「話は聞いている。」

律さんは姿勢を正した。

「初めての誕生日を、無視したな。」

「無視ではありません。時間に、間に合わなかっただけで……」

言葉尻に、律さんの悔しさが滲んでいた。

でも、お父さんは顔色ひとつ変えずに続けた。

「だが娘は、二時間もおまえを待ったんだ。何も知らされずに。誕生日に、一人で。」

律さんは口を開きかけ、しかし言葉が出なかった。

代わりに静かに俯き、拳を膝の上で握った。

「千尋はおまえを信じていた。その信頼を、どうやって取り戻すつもりだ?」

問い詰めるような声。

私は苦しくなって、視線を落とした。

律さんは顔を上げ、私に向き直った。

「……言い訳はしません。責任のある立場なのは事実だけど、それで千尋の気持ちを後回しにしていい理由にはならない。」

律さんの目がまっすぐだった。

いつかプロポーズされたときと、同じ眼差し。
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