御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
「千尋。申し訳なかった。」

その声に顔を上げると、そこには、膝をつき頭を下げる律さんの姿があった。

「……えっ⁉」

驚きで、私は一歩後ずさる。

律さんが、私に――土下座?

会社では数千人を率いる御曹司。

冷静沈着で、誰よりも堂々としている人。

そんな律さんが、今、私一人のために、頭を床につけている。

「やめてよ、律さん……!」

慌てて律さんの肩に手を伸ばす。

でも、彼は動かない。

「千尋。」

顔を上げた律さんが、私の手をそっと取った。

その手は、冷たくもあたたかくもなく、ただ真剣だった。

「もう一度……やり直したいんだ。千尋の誕生日を。」

その目に、また胸が痛くなった。

真っ直ぐで、必死で、どこまでも不器用で。

「でも、誕生日は……その日しかないのよ。」

ぽつりとつぶやいた私の声に、律さんは力強く頷いた。

「分かってる。だから、“やり直す”じゃなくて、“やり直したい”んだ。千尋が生まれてきてくれたことを、ちゃんと……心から、お祝いしたい。」
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