御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
その言葉に、思わず喉が詰まる。

律さんが、私の誕生日を「祝いたい」と言ってくれた。

形式じゃなくて、義務でもなくて――心から。

「……そんなの、ズルいよ……」

気づけば、涙が頬を伝っていた。

その一滴を、律さんの指先がそっと拭った。

「泣かせたくて来たんじゃない。笑ってほしいんだ。千尋の、あの笑顔が見たい。」

「……じゃあ、ちゃんと連れて行ってよ。今度こそ。」

「もちろん。」

律さんは立ち上がると、私の手を優しく握り直した。

「君の誕生日を、世界で一番大切な日にする。何度でも、これからもずっと。」

私は、うん、と小さく頷いた。

「……帰って来てくれるね?」

律さんが、少しだけ不安そうに私を見つめる。

私は――涙で滲んだ目のまま、うんうんと何度も頷いた。

「うん……うん……!」

すると律さんは、小さく息を吐いて微笑んだ。

そして私の手をしっかりと握り直す。
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