御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
「おおっと。」

滝くんは、ガクッと膝を曲げて見せた。

「そりゃまた、フラグ立ちまくりじゃないですか。」

「なにそれ。」

「ていうか……相手って、一流企業の御曹司なんでしょ?」

「……まあ、そうだけど。」

「だったらいいじゃないですか。朝倉さん、ワンチャン掴みましょうよ!」

「簡単に言わないでよ……!」

私が呆れた声を上げると、滝くんはエントランスの前でぴたりと立ち止まり、大きなため息をついた。

「朝倉さん。」

「……なに?」

「優良物件って、逃すともう出てこないですよ。」

静かな声で、しみじみと言うもんだから、なんだか笑いそうになった。

けれど、胸の奥は妙にざわざわしていた。

──優良物件。
そんな風に割り切れたら、どんなに楽だったろう。

私は笑えず、ただ、黙って空を見上げた。
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