御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
「そんなことないよ。嬉しいもん。」

慌てて弁解した、その隙を――

「なら、仕方ない。」

ふいに、ぎゅっと抱きしめられた。律さんの腕が、思ったよりも強く私を包む。

「律さんっ……玄関……」

「今さら気にする?もう夫婦でしょ。」

耳元に落ちてきた低い声に、心臓が跳ねた。

「千尋が素直に喜ばないから、スキンシップで確認するしかないでしょ?」

「……そうやってすぐ甘える。」

「甘えてるんじゃない。愛を伝えてるだけ。」

くすぐったいような抱擁の中で、私は小さくため息をついた。

──でも、心の中は笑ってる。
だって、こんなふうに好きって毎日言ってくれる人なんて、そうそういない。

「わかった。帰ってきたら、ちゃんと照れるから。今は会社に行かせて。」

「ほんとに?」

「ほんとに。」

するとようやく、律さんは腕を緩めた。

「じゃあ、いってらっしゃい。俺の綺麗な奥さん。」

「はいはい。……行ってきます。」
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