御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
ドアの向こうに出た途端、背中がぽっと熱くなったのは――

律さんの声が、また追いかけてきたから。

「千尋、愛してるよー!」

私は、笑いながらドアを閉めた。まったく、ほんとに。

──でも、この甘さが毎日続いても、たぶん私は、飽きたりしない。

それからというもの、律さんはすっかり機嫌をよくして、毎朝のハグが日課になった。

「律さん、近いよ。……っていうか、いつも以上にくっついてない?」

「うん。毎日更新中。」

腕の中で苦笑する私に、律さんは満足げに頷いた。

まるで、出勤前の恋人同士みたいな時間。

でも私たちは、もう夫婦。

それなのに、まるで恋を始めたばかりのふたりみたい。

私はというと、この“朝のハグタイム”を確保するために、5分早く起きるようになった。

たかが5分。されど5分。

このたった5分のために、髪型もメイクも時短で工夫する。
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