御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
「……ちっ。」

わざとらしく舌打ちした律さんの額をぺちんと叩いて、私は笑った。

それでも――
この朝の数分間が、私たちにとって、何よりも甘い時間になっていた。

翌朝、私はごく軽く咳き込んだ。

「ごほ、ごほっ……」

「……千尋?」

すぐさま律さんが近づいてきて、心配そうに顔を覗き込んできた。

「大丈夫。ただの咳だよ。風邪ってほどじゃ――」

「ダメ。風邪は万病のもと。」

きっぱりとした口調で言い切られた。

「いやでも、今日はせっかくのお休みだし、ちょっと買い物とか――」

「却下。ベッドへどうぞ、お姫様。」

そう言って、私は半ば抱きかかえられるようにして寝室へ連れて行かれる。

「えぇ……」

毛布をかけられ、ぽすんとベッドに沈み込む私。

「さてと、洗濯と掃除しなきゃだよね。」

「え?律さんが?」

「うん。任せて。俺、いつも千尋のこと観察してるから、やり方だってばっちり把握済み。」
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