御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
律さんの手が、静かに私の体を包み込んだ。

「本当?」

「うん……でも、まだちゃんと調べてないの。だから……」

期待させてしまうかもしれない。

そのことが、少しだけ怖かった。

「だから……」私は律さんから離れようとした。

でも、その瞬間、律さんが私の手を掴んだ。

「妊娠検査薬、買おうか。」

その声は、あまりにも真っ直ぐで、真剣だった。

「……いいの?」

「何が?」

「だって……まだ分からないのに。違ったら、がっかりさせちゃうかもしれない……」

律さんは、私の頬に触れた。

そして、やわらかく微笑む。

「千尋が子供を授かっても、授かってなくても、どっちでも嬉しいよ。」

「え……?」

「だって、千尋が“もしかしたら”って思えるほど、俺との時間を真剣に感じてくれてる。それだけで、十分すぎるほど幸せだ。」

ああ、この人と結婚してよかった。

心の奥から、涙がこみ上げてきそうだった。
< 246 / 252 >

この作品をシェア

pagetop