御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
「一緒に住めと言ってるんじゃない。通って、千尋を見てやってくれ。娘がどんな生活をしているのか、自分の目で見て、ちゃんと理解してやってほしいんだ。」

律さんは、ゆっくりと立ち上がり、深々と頭を下げた。

「ありがとうございます。必ず、伺います。」

私は思わず父の手を握った。

「お父さん……ありがとう。」

娘を心配し、彼なりに確かめたかったのだと思う。それでも“この人なら任せられる”と思ってくれた。

律さんが忙しいのは知っている。きっと毎日なんて無理だろう。

それでも、彼はこの一週間を、大切に使おうとするだろう。

そう思った瞬間──私は、覚悟を決めた。

この人と結婚する。

この人なら、私の人生を預けてもいい。

そう強く、思えた。

そして翌日。

チャイムの音が鳴った時、私は少しだけ深呼吸をした。

「い、いらっしゃい。」

扉の向こうには、スーツ姿の神楽木律さん。

だけど、どこか仕事モードとは違う、柔らかい表情だった。
< 42 / 252 >

この作品をシェア

pagetop