御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
「千尋。」

名前を呼ばれただけで、胸が高鳴る。

この人が、夫になるのかもしれない。

ほんの少し前まで考えられなかった未来が、今、目の前にある。

そして律さんは、驚くほど律儀に──

本当に毎日、私の部屋に来てくれた。

「ただいま。」

そんな言葉を言うたび、まるで夫婦みたいだった。

食事をして、テレビを観て、たまにゲームもした。

私の部屋にある、なんてことのない空間が、毎日少しずつ“二人の時間”に変わっていく。

そして7日目。

律さんは私に、そっと一枚の紙を差し出した。

「今日のうちに、書いててほしい。」

それは──婚姻届だった。

名前、住所、捺印。

ただの紙のはずなのに、その重みが指先から伝わってくる。

「まずは、俺が書くか。」

そう言って、迷いなく「神楽木律」と記入する律さん。

「はい、千尋の番。」

ボールペンを差し出されても、私はそのまま固まってしまった。
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