御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
「……書けない。」

「……何か迷うことあった?」

律さんが、心配そうに私の顔を覗き込んでくる。

その目は、いつものように優しい。

だからこそ、私は正直に言った。

「私たち……まだ、キスもセックスもしてない。」

静まり返る部屋の空気。

律さんの表情が、ふっと変わった。

けれど、驚いたり、焦ったりする様子はなかった。

「うん。わざと、入籍するまで待ってたんだけど。」

でも、触れられないなんて、本当に私のこと──

「女だって、見てる?」

律さんの目がぱちくりと瞬いた。

「……女だと思うから結婚したいんだけど?」

「そうじゃなくて……」

私は視線を落としながら、恥ずかしさを堪えて言葉を絞り出した。

「律さんが……欲しいって、思える女かどうか、気になって。」

沈黙。けれど、それはほんの一瞬だった。

次の瞬間、強く、熱く、唇が重なった。

深く、何度も、まるでずっと我慢していたものを一気に放つように。

「……おまえが、煽るから。」
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