御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
時計の秒針の音が、やけに響くリビング。

私は自分の膝を抱えて、ソファに座り込んだ。

──と、その時。

「ただいま。」

ドアの開く音と共に、少し息を切らせた律さんが立っていた。

「ごめん、会議が押してて……すぐ連絡できなくて……」

「……ううん。大丈夫。」

だけど、ちゃんと言わなきゃと思った。

「寂しかった。今日は、律さんの“おかえり”が言いたくて、ずっと待ってたから。」

私の言葉に、律さんの表情が曇る。

「ごめん、千尋。」

そう言って律さんは、私をぎゅっと抱きしめた。

「明日からは、ちゃんと帰る。君の“おかえり”を聞ける場所に、必ず戻ってくるから。」

その言葉で、私の中の寂しさは、少しずつ溶けていった。

その瞬間、ぽろっと涙がこぼれた。

「泣いたりして、ごめん……」

気づけば声まで震えていた。

律さんが心配そうに覗き込む。

「千尋?」

「仕事だって、分かってるんだけど……」

言葉を選びながらも、胸に溜めていた気持ちが溢れた。
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