御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
「この家、一人だと、確かに……寂しいね。」

そんな私の頬を、律さんの指が優しくなぞる。

「ごめん。寂しい想いさせて。」

そっと涙を拭ってくれたその手が、あたたかくて。

「早めに、子供作ろうか?」

突然の言葉に、また涙がこぼれそうになる。

嬉しくて、びっくりして、でもやっぱり……まだ。

「ううん。しばらく律さんと恋愛したい。」

そう言って、ぎゅっと抱きついた。

「夫婦だけど……もっと恋人でいたいから。」

「参ったな。」

「ん?」

耳元で囁く声が、ほんの少し照れている。

「可愛くて……お腹空いてたの、忘れた。」

「ふふっ、それは困るね。」

「うん。でも、千尋の涙よりは、ずっとずっと大事なものじゃない。」

その夜、二人で温め直した夕食は、ほんの少し冷めていたけれど。

心は、今まででいちばん温かかった。
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