御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
「……んっ。」

柔らかく、でも深く、熱を孕んだキス。

朝の空気が一瞬で色を変えたように感じた。

「ふぅ……」

息が漏れる。心臓の鼓動が早くなる。

こんな情熱的なキス……初夜の時以来じゃないかな。

あっ、なんだか身体が熱くなってきた。

ぼんやりとした思考のまま、頬にもう一度キスをされる。

「千尋、今日も可愛いね。」

耳元で囁かれて、身体がびくっと反応する。

「い、行ってきます……」

「待って。……行くな。」

律さんが私を抱き止める。

律さんはふっと笑みをこぼし、静かにカバンを床に置く。

ジャケットを脱ぎながら、近づいてくる気配に、思わず背筋が伸びた。

「……後ろ、向いて。」

「え?」

戸惑う間もなく、彼の手が私の肩に触れ、そっと壁際へと導かれる。背後から回された腕。息が、ふっと耳元にかかる。

「……俺だけ、こんなに欲しくさせて……。このまま、会社に行けるわけないだろ?」
< 80 / 252 >

この作品をシェア

pagetop