御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
「朝倉さん、なんといいますか……」

滝君が言いにくそうに言葉を探していると、部長がズバッと口を挟んだ。

「新婚さんって雰囲気、ないんだよな。」

「へ?」

「仕事ばっかりしてるし。朝も夜も遅いし。ほんとに一緒に暮らしてるのか?って。」

「いや、ちゃんと暮らしてます!玄関でキスしてます!っていうか、今朝なんて――」

はっ、と口を押さえる。

……しまった。またやらかした。

部長がニヤついた顔で言った。

「何、朝からイチャついてきたのか?」

私は黙って下を向く。だって……図星だし。

すると部長がふっと遠くを見るような目になった。

「俺にもあったな……そういう時期。」

「部長……」

滝君がそっと部長の背中を摩った。

「うちも……遠い昔に。」

なんかしみじみしてるけど、その“昔”って、どれくらい前なんだろう。

私はぼんやり思う。いつか律さんも、こんな風に懐かしむ日が来るのかな。
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