御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
「やっぱり、千尋主導じゃん……」

拗ねたようにキッチンを離れようとする律さん。その背中を、私はすぐに抱きしめた。

「でもね、律さんが欲しがってくれるの、すごく嬉しいよ。」

ぎゅっと抱き返されたその腕の温もりが、私の胸をじんわりとあたためてくれた。

休日の昼下がり。

柔らかな陽射しがリビングに差し込むなか、律さんはソファで気持ちよさそうにうたた寝していた。

その静寂を破ったのは、ピコンというスマホの通知音。

ぼんやりとその音に反応した律さんは、手元のスマホを一度見て、それを裏返した。

──なに、今の。

ほんの小さな違和感だった。でも、その行動が気になって仕方なかった。

寝息を立てている律さんを横目に、私はそっとスマホを手に取る。

《元気?結婚したんだって?会ってお祝いしたい。》

送り主の名前は──涼花。

知らない名前。でも、その文面から察するに、律さんの知り合い、しかもかなり親しげな女性のようだった。
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