御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
SUZUKA

あの時、律さんのスマホに表示された差出人の名前。

そして……あのモデル、石原涼花。

私じゃない。

これは、私のための指輪じゃなかった。

指が、冷たくなる。

頭がついていかない。けれど、心だけが先に傷ついていく。

どういうこと?

どうして、こんなものが──

なんで、律さんのクローゼットに……?

──わたしは、律さんの“今”じゃなくて、過去の延長線上にいるだけ?

胸が痛い。涙が、込み上げてくる。

でも泣けない。だって、まだ……何も聞いてないから。

私はそっと、指輪の蓋を閉じた。

それでも心の蓋は、もう閉まらなかった。

でも、涙は止まらなかった。拭っても、拭っても、あふれてくる。

──どうして。私じゃなかったの?

──律さんの「永遠」は、他の人の名前だったの?

「ただいま。千尋?」

律さんの声が聞こえた瞬間、喉の奥から嗚咽が漏れた。

もうダメだ──顔を見たら、ますます苦しくなった。
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