八咫烏ファイル
第六章:宣戦布告

第六章:宣戦布告


【金虎開発ビル・最上階】
巨大な社長デスクに土足のまま足を上げる男。
王 霸(おう は)。
彼は死んだ林 豪(リン・ハオ)が大事にしていた高級な葉巻に火をつける。そして満足げにその煙を天井に吐き出した。
そこに三人の屈強な男たちが入室する。
王の腹心である幹部たち。
李 傑(り けつ)趙 剛(ちょう こう)そして孫 鋒(そん ほう)だった。
「で?」
王は葉巻を咥えたまま言った。
「浜崎組からさらったあのゴミは吐いたのか?」
三人の中心にいた李 傑がその場に片膝をつく。
そして左手を握り拳に右手を掌にして胸の前で合わせる。
「はい。吐きました」
その声は一切の感情を含んでいない。
「関東誠勇会が雇った殺し屋が林 豪を殺ったと」
「そいつの居場所は?」
「闇の殺し屋らしく所在までは分からないと」
「……そうか」
王はつまらなそうに呟くと葉巻の灰を床に落とした。
そして部下の一人趙 剛を指差した。
「趙」
「はっ」
「そいつの役目は終わった」
「爆弾を仕込んだ車に乗せて警視庁の本庁舎に突っ込ませろ」
そのあまりにも残忍な命令。

だが趙 剛は表情一つ変えない。
彼はその場で例のポーズを取りただ短く応えた。
「はっ!」
「それから」
王は次に孫 鋒を指差した。
「孫」
「はっ」
​「まず警視庁に車を突っ込ませることで、警察の機能を物理的に麻痺させる。これが第一の目的…
​しかし真の目的はそこではない。乗っているのが拉致した浜崎組の組員だ。これを**[浜崎組による警察への自爆テロ]**に、見せかける。警視庁が混乱したそのタイミングで関東誠勇会の本部を攻め落とす!」

「はっ!」
孫 鋒もまた同じように忠誠を示した。
王はゆっくりと立ち上がるとその太い腕を天に掲げた。
「準備をしろ」
その声が広いオフィスに響き渡る。
「準備が出来たら行くぞ」
三人の幹部たちはその場で一斉にあのポーズを取った。
「「「はっ!」」」
暴君による東京裏社会の制圧計画。
そのカウントダウンが今始まった。
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