八咫烏ファイル

【滝沢が運転する車内】
黒いスーパーカーが夜明け前の首都高速を静かに滑っていく
車内には硝煙とそしてわずかな血の匂いが残っていた
滝沢「……終わったな…」
夜「終わったね」
滝沢は前を向いたまま尋ねた
滝沢「でどうだった?今回は」
夜「ん〜……」
夜は少し考える
夜「珍しいモノも見れたしちょっと楽しかったかな?」
滝沢「はぁ?楽しかっただと?」
滝沢が呆れたように言う
夜「あ!でもクソ野郎もいたからな。本気で殺してやろうかと思ったけど」
滝沢「なんだよ。言ってくれりゃ安くで殺してやったのに」
滝沢がニヤリと笑う
夜「自分で墓穴掘ってぐちゃぐちゃになって死んだけどね。アイツ」
やがて車は帝国ホテルの地下駐車場へと入っていく
滝沢「なんだ死んだのか」
滝沢は心底拍子抜けしたような顔をしていた
二人は車を降りるとあのロイヤル街道の入り口へと向かう
夜「あ〜〜〜……」
夜は通路を歩きながら大きく伸びとあくびをした
滝沢「さすがにオールで人殺しは疲れたな」
夜「何よオールで人殺しって」
夜「初めて聞いたわそんな言葉」
夜は声を上げて笑った
滝沢「お前もオールで除霊してたんだろうが」
夜「オールで除霊も変でしょ」
夜も笑う
やがて二人はあの会議室の扉の前にたどり着いた
滝沢が扉を開ける
【ロイヤル街道・地下会議室】
二人が会議室に入ると
巨大な円卓に座っていた日向 観世が立ち上がって二人を迎えた
その顔には穏やかな笑みが浮かんでいる
日向「お二人とも。お見事でした」
夜「さくせんしゅーりょー」
夜は気の抜けた声で言った
滝沢「日向」
滝沢が真面目な顔で観世を呼んだ
日向「なんですかな?滝沢君」
滝沢「頼みがある」
日向「関東誠勇会のことですか?」
観世は全てをお見通しだった
滝沢「そうだ。せめて組長の坂上だけでもどうにかならんか」
日向「いいえ」
観世は静かに首を振った
滝沢「……ダメか」
滝沢の肩がわずかに落ちる
日向「いいえ」
観世はにこりと微笑んだ
日向「関東誠勇会は全員証拠不十分で釈放するようにすでに手を回しました」
滝沢「!ほんとか!」
日向「はい」
滝沢「……はぁ〜。俺のアジトが無くなるかと思ったぜ」
滝沢は心底ホッとした顔でそう言った
夜「そっちの心配かよ!」
夜が大笑いする
日向「万が一住むところに困ったら私に言ってください」
日向「そのくらいは何とかしますよ」
滝沢「いや今のところがいいんだ」
滝沢「……闇稼業だからな」
日向「なるほど」
夜は更衣室へと着替えに行った
滝沢「それとこの服凄いな」
滝沢は自分の戦闘服を見下ろす
日向「気に入っていただけましたか?」
滝沢「ビルの壁に叩きつけられて壁ごとぶち抜いたがほとんどダメージがなかった」
日向「それは良かった」
日向「よろしければそのまま差し上げますよ」
滝沢「そりゃ助かる。じゃあ貰って行く」
やがて夜がいつものスーツ姿に着替えて戻ってきた
日向は改めて二人に向き直る
そして厳かに告げた
日向「ではこれにて今回の八咫烏を解散いたします」
滝沢「おう」
夜「うん」
日向「我ら三本足の烏。日本国を導く者なり」
日向「今後八咫烏が結集しないことがこの国にとって一番良いことだ」
日向「だが天皇と日本国を護るべき事態が起こればまた八咫烏は結集します」
日向「―――それまでお元気で」
滝沢「あぁ」
夜「じゃあね」
夜がひらひらと手を振った
日向「また帝国ホテルの駐車場に送りの運転手を用意してあります」
滝沢と夜は会議室を出た
【ロイヤル街道】
二人は再び静まり返った秘密の通路を歩いていた
滝沢「……帰ってからが面倒になりそうだな互い」
夜「そうね」
二人はヤレヤレと言った顔で顔を見合わせた
夜「さすがにこのことは外部には出せないからね」
滝沢「確かにな」
やがて二人は帝国ホテルの地下駐車場に出た
そこには二台の黒い高級車が待機している
それぞれの運転手が後部座席のドアを開けた
滝沢「またな」
夜「じゃあまた」
夜がひらひらと手を振る
そして二台の車は別々の方向へと東京の夜明けの中へと走り去っていった
< 40 / 46 >

この作品をシェア

pagetop