靴に魔法をかけたのは
2 シンデレラの靴
 翌日の水曜日、シフトが休みの晴佳はタブレットの入ったバッグを肩にかけ、街をぶらぶらしていた。秋の日差しを受けた街並はどこかすまし顔に見える。

 晴佳はさわやかに見えるようにくすみブルーの服でセットアップしていた。緑がかったスカートはお気に入りで、髪がうまく巻けてきれいな外はねになって気分がいい。靴は茶色の合皮のチロリアンシューズにした。アルプスのチロル地方の牧童が履いていたチロリアンブーツが由来で、歩きやすい。

 靴ショップだけではなく、アパレルショップ、書店やCDショップなどを見て回り、店を出るとすぐさま参考になる点をメモする。

 疲れて入ったカフェはシンプルながらオシャレで、空間をゆったり使っていた。
 オフホワイトの壁には小さな風景画が飾られ、脇の大きなアレカヤシは細い葉を優雅に広げている。天井から垂れた真ん丸のライトから届く光は穏やかで優しく、静かに流れるジャズが心地いい。

 カウンター席でケーキセットを注文し、タブレットを取り出す。
 平日のせいかお客さんが少ない。これならゆっくりまとめ作業ができそうだ。
 スタンドでタブレットを立て、折り畳みのキーボードを設置した。スマホのメモをタブレットに移し、書き忘れていた部分を付け足す。
 商品展示の仕方、ポップの付け方などなど。

 店内の写真撮影はできなかったので、紙のメモ帳には棚の配置図をメモしてある。それをタブレットで撮影して挿入した。
 ケーキセットが届き、晴佳はタブレットとキーボードを脇に寄せた。
 スマホで撮影してから、コーヒーにミルクを入れて飲み、ケーキを頂く。疲れた体に甘さが染みわたり、おいしさに震えていたときだった。

「もっちーじゃん。なにやってんの」
 かけられた声に振り向くと、サックスブルーのシャツを着た諒がいた。ボトムはネイビーで、ベルトに合わせた濃茶の革靴をはいている。プレーントゥのそれはぴかぴかに磨かれていた。
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