靴に魔法をかけたのは
 係に案内されて座った席の隣に彼がいた。背の高いイケメンだ、といつもの癖で足元を見ると、大きな靴が目に入った。
「でか!」
 思わずつぶやいた声に、自分で慌てた。

「ご、ごめん!」
 返ってきた彼の苦笑はさわやかだった。
「いいよ、言われ慣れてるし、男だから足がでかいのはネタになるし。靴選びが大変だけど」
「わかる。私も足デカくて履ける靴が少なくて」

 彼は二十九センチ、晴佳は二十五センチで、それぞれ男女の平均より足が大きい。
「同士じゃん。靴下、すぐ穴があかね?」
「あくあく! 普通サイズだと足が痛くなるし」
 速攻で同意する晴佳に、彼は続ける。

「階段の幅が狭くて降りにくい」
「さすがにそこまでじゃないかな」

「スリッパから足がはみだす」
「それもないかな」

「足ちっちゃいんじゃん」
 言われた晴佳は目を丸くした。
「そんなこと言われたの初めて」

 それから友達となり、店長となってからは良きライバルとなり、恋なんてそっちのけで競い合ってきた。

 諒は働きが認められ、ファミリー向けから紳士靴店へと異動になった。
 紳士靴の店は実験的に一店舗であり、本社が動向を注視している重要店舗だ。一歩先を行かれたみたいで、晴佳は内心で悔しく思っていた。
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