靴に魔法をかけたのは
「他店調査、一緒にいいか? ふたりの方が不審がられないし」
 諒の言葉に、晴佳は思い出から現実に戻った。

「いいよ。でも海戸くんよりいい案を出すんだから!」
 カップに残ったコーヒーを飲み欲し、対抗心をめらめら燃やす。

 と、立ち上がった諒が、ぽん、と頭に手を置いて来た。

 え? と彼を見ると、少しかがんだ彼がまっすぐに自分を見ている。その唇がにやりと笑みに孤を描いた。

「やれるもんならやってみ」
 にやにや笑いながら髪をわしゃわしゃとかき回される。瞬間、カーっと頭に血が昇る。
「絶対にやってやるんだから!」
 手を払いのけて大声で言い返し、立ち上がった。

 直後、はっとする。
 店内の目がすべて自分たちに集まっていて、頭が真っ白になった。
 どうしよう。こういうとき、どうしたら。

 先に動いたのは諒だった。
「騒がしくしてすみません。ケンカとかじゃないです」
「すみません」
 諒が頭を下げるのに続き、晴佳も慌てて店内の人に頭を下げた。

 そのままタブレットを片付け、諒とともに店を出る。
 支払いは諒がしてくれて、晴佳は礼を言った。

「ありがとう。ごめんね、恥ずかしい思いをさせたのに」
「俺が煽ったせいだし、お詫び。すぐ感情的になる癖、直ってないな」
「もういい大人なんだし、直したいんだけど」
 晴佳はため息をついた。
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