靴に魔法をかけたのは
「そこがいいとこでもあるからな」
「えー?」

「自分に素直ってことだろ。なに考えてるかわかりやすいのもいい」
「褒められた気がしない」
 眉を寄せると、諒は苦笑した。温かな眼差しが子どもを見守る慈愛にしか思えなくて、晴佳はため息をついた。

 彼の落ち着きや大人っぽさがうらやましい。とっさの対応も完璧。彼にはいつも負けてばっかりだ。
 むーっと口をへの字にしていると、頭を撫でられた。

「ちょ、なにすんの!」
「髪、直してあげてんの」

「そういうのは恋人にやってあげなよ」
 逃げるように体を離すと、彼は肩を竦めて手をひっこめた。こんな仕草もいちいちかっこいいのが腹立つ。

「嫌味か。いないの知ってるくせに。お前だって恋人いないんだからいいだろ」
「今は仕事が恋人なだけですぅ。その気になればすぐできますぅ!」
 ムキになった反論に、彼はくくっと笑った。

「俺はお前とバカ話してるほうが楽しいよ」
「それ、私じゃなかったら誤解するよ?」

「お前だから大丈夫だろ。ほかの人には言わねーし、やんねーよ」
 妙な信頼に、微妙な気持ちになった。恋をしているといわれても困るが、まったく女として見られていないこともプライドが傷付く。反面、自分が特別扱いなのが嬉しくもある。

 晴佳の複雑な顔に、諒は苦笑した。
「当分無理そうだな、結婚はおろか恋人も」
「なんかまだ遠いんだよね。友達は結婚してる人もいるのに」
「お前は鈍感だからな」
 苦笑まじりに言われ、晴佳はムッとした。
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