靴に魔法をかけたのは
「やっぱり買います!」
「ありがとうございます」
 晴佳はにっこりと答えた。
 防犯タグを切ってレジでお会計をする間も、女性はわくわくと期待を浮かべていた。今度のおでかけには必ず履こう。そんな声が聞こえてきそうだ。

「ありがとうございます」
 商品を渡すと、彼女は足取り軽く店を出て行った。
 晴佳は満たされた気持ちでお辞儀をして見送る。

 最後の一足がぴったりとはまるなんて、まるでシンデレラだ。
 思って、はっとする。このコンセプトは使えそうだ。
 晴佳は空き時間にささっとそれをまとめ、夜にはその案を本社に送った。



 火曜日、店長会議を終えた晴佳は、またしても諒と皐月と一緒にランチに来ていた。本社の近くにあるイタリアンで、ここのパスタは三人ともお気に入りだ。

「くうう! やったああ!」
「採用おめでとうございます、望月さん、海戸さん」

「ありがとう皐月ちゃん。海戸くんの案も採用っていうのがしゃくにさわるけど」
「採用は当然だろ」
 海戸は平然と答える。

 海戸はオーダー靴の案を採用され、晴佳はシンデレラコーナーの案を採用された。
 シンデレラコーナーは、ようはセールコーナーだ。売れ残りにシンデレラの名を冠して特別感を出して購買意欲を煽るのだ。
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