靴に魔法をかけたのは
「商品企画部がポップを作ってくれて、今週末には全店に配布されるの。楽しみ」
「会社が小さいから行動が早いよな。全店舗でっていうのがいいよなあ」
 言いながら、彼はミートソースのパスタを口に運ぶ。

「海戸くん、午後も仕事なのに、よくそれ食べるね。シャツ汚したらどうするの?」
「そんときはそんとき」
 言いながら、次を食べようとしたときだった。
 巻いたはずのパスタがつるりとほどけ、ミートソースが彼のシャツにとんだ。

「やべ」
「あーあ、やっちゃった」
 晴佳はおしぼりを渡そうとしたが。
「私、染み抜き持ってます」
 皐月がバッグから染み抜きシートを取り出し、席を立った。
「さすが、女子力高い」
 晴佳が褒めると、皐月はにこっと微笑んだ。

「失礼しますね」
 皐月は彼のシャツを摘まみ、シートで汚れを摘まむようにふき取る。
「いいよ、自分でやるよ」
 諒は慌てて身を反らせ、断る。

「やってもらいなよ。海戸くんはこういうの雑にやって汚れを広げるに決まってるから」
「そうですよ。任せてください」
「……悪いな」
 諒はあきらめたように大人しくシャツを拭いてもらう。

「……だいぶ綺麗になりました」
 汚れはかなり薄くなった。上着を羽織ればまずわからないだろう。
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