靴に魔法をかけたのは
 晴佳は呆然と立ち尽くし、シンデレラコーナーを見る。週末に売れたので、靴は残りわずかだった。
 まるで自分のようだ、と思った。自分のアイディアでいけると勘違いでいきがって、裸の王様のように取り残されて。
 がくっと肩を落とすと、見ていた芽瑠に声をかけられた。

「ひどいこと言う人いますね」
「期待に応えられない私が悪いんだよ。これも片付けなきゃ。本部に注意されたの。指示通りにしないと」
「……手伝います」
「ありがとう」
 平台に残っていたものを撤去し、新商品を並べ、残り一点の靴たちはエンド什器に並べ直した。
 天辺にシンデレラコーナーのポップをつけたとき、芽瑠が言った。

「シンデレラって、靴のサイズが合ってなかったんですかね」
「どうして?」

「王子の気をひくために脱いだあざとい女性だって言う人もいますけど、普通はサイズが合ってないから脱げるんですよねえ。それが幸せにつながるって、なんか皮肉な気がします。最後にはピッタリって矛盾しすぎ。服もなにもかも消えたのに靴だけ残るのも納得いかないですね。魔法の靴だからと言われればそれまでですが。そもそもガラスの靴で歩けるんですかね」
「鹿山さんってシンデレラが嫌い?」

「幸せが男に左右されるってのが嫌ですね。結婚イコール幸せって決められるのも嫌です」
「確かに」

 とはいえ結婚は人生において重要だし、幸せな結婚をしたいなら、どういう男性であるかは今でも重要だ。
 シンデレラはガラスの靴をどう思っていたのだろう。

 綺麗で素敵だと? 歩きにくい靴だと?
 シンデレラは王子と結婚して、本当に幸せだったのだろうか。
 もし自分で選べるなら、彼女はどんな靴を選んだのだろう。
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