靴に魔法をかけたのは
 すぐに靴を店頭からひきあげ、伝票を作る。
 七時を過ぎた頃、諒がスーツで入って来た。

「わりい、取りにきた」
「ご苦労さま。このまま上がり?」
「ああ。お前も上がりだろ、よかったらこのあと……」
 諒が言いかけたときだった。

 自動ドアが開き、一組の母子が入って来た。
 晴佳はにわかに緊張した。
 子どものほうは、万引きをした女子中学生だ。

「ごめん、ちょっと」
 それだけで、諒は察して口をつぐんだ。
 女子中学生が先導するように歩き、晴佳の前に立つ。

「あんたが店長?」
 母親が不機嫌そうに言い、酒臭さに晴佳は顔をしかめた。母親の目は濁っていて、大きな口はへの字に曲がっている。晴佳を見下すように突き出した顎は角ばっていた。

「そうですけど、なにか」
 子どもの万引きで親が謝罪に来ることはある。が、今回は様子がおかしい。
「たかが万引きに警察を呼ぶとか、ひどくない?」
 彼女の言葉に、店内にいたお客さんがぎょっとして晴佳たちを見た。
 女子中学生は肩を縮め、震えている。

「お話は奥で伺います」
 晴佳の言葉に、母親が鼻にしわを寄せる。
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