靴に魔法をかけたのは
翌週の店長会議もまた、晴佳には憂鬱な時間となった。
万引きの母親が本社に「女の店長に怒鳴られた」とクレームを入れたため、店長会議では「万引き犯に対してもその親に対しても怒鳴ってはならないこと」と全体への注意喚起があった。晴佳は事前に部長から電話で注意されていたため、傷口に塩をぬりこまれた気分だった。
会議を終えたあと、晴佳はのろのろと立ち上がり、肩を落としたまま会議室を出た。今ならリビングデッドとして映画出演できそうだ、と頭の隅で思う。
「大丈夫か」
追いかけて来た諒に声をかけられ、晴佳は口の端を無理矢理上げた。
「大丈夫」
「今日のみに行くか? 愚痴に付き合うぞ」
頭をぐしゃぐしゃとなでられ、晴佳はばっと腕を振り払った。
「そういうのやめてってば!」
思わず声が大きくなり、はっと口をつぐむ。
「ごめん」
「こっちこそ、わりい……」
「うん……」
視線を感じ、きまずくそちらを見たときだった。
そこには目を潤ませた皐月がいて、目が合った直後、目のふちにたまった雫がほろりとこぼれた。
まさか私たちを誤解して?
「皐月ちゃん、違うの」
慌ててそう言ったときだった。
「望月さん、海戸さん……私、やっちゃった……」
「どうしたの!?」
晴佳は慌てて皐月に駆け寄る。