靴に魔法をかけたのは
 自分はずっと、逃げ出したシンデレラの靴に幸せになるための靴を重ね合わせていた。そんなの、齟齬が生じるに決まっている。シンデレラは終始、受動的だった。が、現代の女性はもっと多様で、自分の足で歩いているのだ。

 そうして、もうひとつの思い違いに思考が移る。
 海戸くんと皐月はいつからなんだろう。どうして私は気付かなかったんだろう。どうして話してくれなかったんだろう。話したくないって思われたのだろうか。
 どうして私は泣いたんだろう。友達だと思っていたのに、教えてもらえなかったから? 友情が壊れそうで悲しかったから? それとも……。

 その先を考えたくなくて、晴佳は首をふった。
 昨夜、皐月が発注をミスした靴は画像とともに型番が全店に通知された。大きな会社ではないから誰がミスしたのかはすぐに知れ渡るだろう。
 皐月ちゃん、辞めたりしないよね?

 ふと見た時計では、すでに三十分も時間が過ぎていた。
 他人のSNSを見るだけで時間が過ぎていくのはどうしてなんだろう。
 そう思いながらもやめられずにスライドしたときだった。

 アニメの動画が添えられていて、なんとなく眺める。スポーツシューズをはいた男の子が元気に走っていた。この靴みたことある、と思い、こんなときでも靴が気になるなんて本当に好きなんだな……と泣けてきた。
 最後にはモンスターファンタジー、と題字が出る。小学生が異世界でモンスターを集める話で、子どもに大人気だ。
 靴をもう一度見ようとしたとき、唐突にスマホが鳴った。晴佳はびくっとして、スマホが手から滑り落ちる。

「わわ!」
 落とすまいと掴んだ手が画面に触れ、通話ボタンを押してしまった。
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