靴に魔法をかけたのは
4 魔法の靴
翌日、晴佳はげっそりとやつれて出勤した。
「おはよー」
早番の芽瑠に挨拶すると、ぎょっとされた。
「店長、大丈夫ですか?」
「あはは、夜中まで提案書書いてて。なんとか朝までにメールで送れた」
「ほんと、仕事大好きですね」
芽瑠につっこまれ、また笑ってごまかす。
諒のことで悩み、寝付けなくて提案書を書いていたのだ。
好きって言われて気になるなんて、自分ってちょろいな、いやいや、まだこれは恋じゃない。気持ちが行ったり来たりして、どうにも収まらない。
もしかしたら、ずっと前から好きだったのかもしれない。
その証拠に、頭をさわられるのは嫌じゃなかった。なんなら、自分だけがやられる特別なものだとすら思った。
だけど、彼は皐月と抱き合っていた。二股するような不誠実な人じゃない。自分のことを好きだと言ったのはやはり、友人としてという意味に違いない。
だからこの気持ちが恋なら、失恋確定だ。
そう思うのに、悲しみより清々しさがあった。胸の痛みは確かにある。だけど、嬉しい気持ちも同時にあった。
皐月ちゃんはいい子だし、海戸くんはいいやつだ。大好きなふたりが幸せになるのだから、そんな幸せなことはない。ふたりは結婚するのだろうか。昨日言いかけた「次に行きたい」って、実はそういうことだったりして。結婚式には、絶対にスピーチをさせてもらおう。式の靴、私に見立てさせてもらえるかな。
そんなことを考えながら仕事をしていた夕方。