靴に魔法をかけたのは
 自動ドアから入ってきた女子中学生を見て、晴佳は固まった。
「いらっしゃ……」
 言いかけた芽瑠の言葉が途切れる。
 女子中学生は迷いなく歩いて晴佳の前に来た。
 万引きで迷惑をかけた店にまた来るなんて。こんなに堂々と被害者の前に立つなんて。

 晴佳の頭にカッと血が昇る。
 が、落ち着け、と自分に言い聞かせる。まだ彼女はなにも言っていない。感情的になってしまっては、また失敗してしまう。

「こんにちは。今日はどうしたの?」
 声に険が出ないように気をつけて問いかけると、少女は勢いよく頭を下げた。
「この前はすみませんでした! 私、私……」
 彼女はわなわなと震えていて、今にも泣きそうだ。
 晴佳は芽瑠に店を頼み、少女をバックヤードに連れて行った。あいかわらず物であふれているそこは、ふたり入ればいっぱいだ。

「今日は謝りに来てくれたの?」
 晴佳の問いに、こくん、と彼女は頷く。
「うちの母親って、たぶん、普通じゃないんです。でも、どうしようもなくって……。靴が壊れたけど、欲しいって言ったら贅沢だって怒られて殴られるって思って怖くて。ちょっとくらいならって思っちゃって……」
 言葉が途切れ、涙が零れた。

 子どもには親を選べない。彼女も逃げようがなくて苦しかったのだろう。
 苦い気持ちで、晴佳はあえて言う。
「お店にとってはどれも大切な靴なんだよ」
「はい……本当にすみません」
 彼女は頷いてうなだれた。
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