靴に魔法をかけたのは
「……海戸さんのことなんですけど」
 唐突に話が変わって、晴佳はうろたえた。
「外で待ってるよ。呼んでこようか」
 動こうとした晴佳の手を、皐月が掴んで止める。

「見ましたよね、あのとき。私が抱きしめられたの」
「なんのこと?」
「心配しないでください。私はふられましたから」
「え?」
 戸惑う晴佳に、皐月は目に涙をためてにこっと微笑む。

「あのとき……もう仕事もやめないといけないって思って、やけになってたんです。それで望月さんがいないときに、勢いで告白しちゃって……そしたら、好きな人がいるからって断られました」
 晴佳は答えられず、ただ黙って話を聞く。

「せめて最後に抱きしめてってお願いしました。ずるいって自分でもわかってるんです。海戸さんは優しいから、お願いを聞いてくれるってわかってて……でも、そこへ望月さんが戻って来ちゃって」
 晴佳はなにも言えなかった。
 式の祝辞まで考えていたのに、予想外すぎて思考がついていけない。

「ごめんなさい。嫉妬でしばらく態度がおかしくなるかもしれません。仕事に一生懸命で成果も出して、海戸さんと仲がいいのもうらやましくて。でも誤解しないでください」
 皐月は懇願するように晴佳を見た。

「望月さんのことも大好きです。三人仲良く、ずっとこの関係が続けばいいなって思ってました」
「私も、そうだった……」
 ずっと三人で、恋なんか介入せずに友情でつながっていられたら。そう思った。
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